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シュールレアリズムについて(3) [アート]

今回は、サルバドール・ダリについて、簡単に紹介していきます。

私に強い感動を与え、芸術の眼を開いてくれたのは、サルバドール・ダリです。
そのダリはシュールレアリストの中でも特に異端的存在と言えますネー。
ダリは1904年にスペインの田舎町フィゲラスで生まれました。
サルバドールとは「救世主」という意味です。
ダリはフロイトの著作や精神分析に深く心を奪われ、ダリ独自の「偏執狂的批判的(パラノイアック・クリティック)」方法というものを生み出しました。
これは「精神錯乱の世界を造形的手段によって具体化しうるような、積極的な方法」ということです。

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         上の写真がサルバドール・ダリです

つまり、今でいう統合失調症の妄想の世界を芸術作品として表現しようと言うことでしょうか。
ダリの作品には、“長い棒”のようにフロイト的なリビドー(性欲)的解釈が見られ、セクシュアルな表現に満ちています。
1938年には、ナチス・ドイツから逃れてロンドンに住んでいたフロイトに会っています。
フロイトは、ダリのことを「彼以上に完璧なスペイン人は見たことがない。何と言う狂信者だ」と言ったといいます。

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      ダリ 『「ミレーの建築的晩鐘』

私も、ダリの作品を知ってから、さらにフロイトの精神分析に興味を持ちました。
フロイトの著作の『精神分析入門』『夢判断』などから読みました。

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でも、私の場合は、フロイトにはもう一つ馴染めないものを感じましたねー。
皆さんはどうですか?
エディプスコンプレックスだとか、男根期だとか、なかなか面白いことだと思いましたけど・・・
なるほど、人間の心にはそうしたものもあるのかなぁ、と思った程度でした。
     

これは人間の無意識という深い世界を、その頃20歳前後だった若い私には、あまり理解できなかったことが大きな原因だと思います。
また、私が西洋人ではないということも、フロイトに距離感を感じさせたのかも知れません。

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詩人ポール・エリュアールの夫人が、後のダリ婦人となるガラです。

ちなみに、このポール・エリュアールといいアンドレ・ブルトンといい、その詩作品を読んでも、私にはサッパリわからないのですが・・・??
皆さんもシュールレアリズムの詩を、一度読んでみてはどうですか?

ところで、1932年にガラと結婚して以来、ダリにとって妻のガラは尽きることの無いインスピレーションの源でした。
このように異性との出会いが、アーティストのインスピレーションに火を点けるという事はよくあることです。
皆さんも思いあたることはありませんか?
事実、ガラが1982年に死去した後は、ダリは完全にその活動を停止しています。

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   ガラとダリです。

晩年には、火事で全身に大火傷を負っています。
私は、テレビでダリが火傷で包帯巻きにされている姿を観た事がありますが、それが印象に残っています。
1989年1月23日、異端のシュールレアリスト、サルバドール・ダリは肺炎と心臓発作で亡くなりました。
享年84歳でした。

今回はシュールレアリズムについて、ざっとまとめてみました。
また、ここでは、ごく簡単にダリについてもお話ししました。
ダリについては、また改めて、さらに詳しく述べていこうと思います。
                                完
         
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シュールレアリズムについて(2) [アート]

今日は、シュールレアリズムの絵画についてお話します。

一般に、シュールレアリズムの絵画には大きく分けて2つのスタイルがあります。

一つは、絵の具を滴らせたり、垂らした絵の具を紙にこすり付けてはがした模様を利用する、あるいは自動筆記やデペイズマン、コラージュなどを使い、偶然を重視するものです。
私の作品の中にもそうした技法を使ったものがたくさんあります。
これは、自意識がはいらない状況をあえて作り、そこで絵を描くことで、無意識の世界を表現しようとした画家たちの手法です。
主観や理性や意識が介在できない状態で、偶然出来たものや、そもそも意識の介在から解き放たれた夢の中からこそ、普段気付かれない現実=超現実が出現すると考えました。
マックス・エルンスト、ジョアン・ミロがその代表的な画家です。
彼らの絵画は具象的な形態がなくさまざまな記号的イメージにあふれ、その後の抽象画に大きな影響を与えることになりました。

下はミロの作品です。
     joan_miro.jpg
     ジョアン・ミロ『ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子』


シュールレアリズムのもう一つスタイルは、サルバドール・ダリのように、リアルな描写で現実にはありえない光景を描こうというものです。
そこでは夢や無意識下でしか起こりえない奇妙な世界が描かれました。
同様の作家にはルネ・マグリットやデルヴォーなどがいます。

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         ルネ・マグリット 『白紙委任状』

彼らの絵の中に出てくる人物や風景はあくまで具象的です。
こうした絵は、普段絵画に全く興味の無い人でも楽しめると思います。

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シュールレアリスムでは、人間が理解している「現実」というものは、実は、単なる一面的な現実であるのだと考えました。
そして、芸術における創造性とは、精神分析の創始者ジークムント・フロイトがいう無意識のなかに宿っているのではないかと考えたのです。
人が芸術の美に感動するのは、実は、無意識が美を感じて、意味を理解するものではないかと考えたのです。
そこで、シュールレアリストたちは無意識による美の創造を考えました。
そのための手段として自動筆記などの技法を使い、無意識の流れに任せて作品を創作していくと思いがけない美が生み出されると考えたのです。

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これが、有名なフロイトです。

このようにシュールレアリストたちは、フロイトが主張する「無意識」が、より真実の美や人間や社会についての「真実」を表現するのに有用であると考え、「無意識」を利用した芸術運動を展開したのです。
                                        つづく
          
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シュールレアリズムについて(1) [アート]

皆さん、こんにちは。
今日は、シュールレアリズム(超現実主義)について、その内容と歴史をわかりやすく簡単にお話していこうと思います。

    DSCN2569  80.JPG    

では、シュールレアリズム講義 Lesson1・・・です。

皆さんの中には、シュールレアリズムという言葉を知っている方は多いと思います。
でも、その内容はあまり知らない人が多いのではないでしょうか。

まず、“超現実”とは、現実を超えて離れていたり、非現実である事を言うのではありませんヨー。
日本ではよくちょっと変わったものを、“シュールな”と言ったりしますネ。
そこから何でも変わったものをシュールレアリズムだと考えてしまいそうです。
でも、シュールレアリズムとはただ単に、変わっているものを言うのではないのですよ。
それは、「過剰なまでに現実」「上位の現実」「ものすごい現実」「強度の強い現実」というような意味なのです。

まず、芸術運動としてのシュールレアリズムの始まりは、フランスの詩人アンドレ・ブルトンが1924年にパリで発表した「シュールレアリズム第1宣言」です。

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これがアンドレ・ブルトン(André Breton, 1896年-1966年)です。

「シュールレアリズム第1宣言」のなかで、彼は「理性による抑制をすべて取り除き、いっさいの美的あるいは道徳的先入観から離れて行なわれるべき思考の書き写しである」と述べています。
当初は、絵を描くというのは意識的な行為であるため、シュールレアリズムの絵画は存在し得ないと考えられていたそうです。

このシュールレアリズム宣言以前にはダダイズムという芸術運動が起こりました。
ダダイズムとは第一次世界大戦の混乱に嫌気がさした芸術家が、本来の人間らしさを取り戻そうという活動です。
このダダイズムに参加していた多くの作家がシュルレアリスムに移り、発展的な形でダダイズムは解消していったのです。
そして、シュールレアリズム運動はその後、政治や思想・文学などさまざまな分野におきな影響を与えることになりました。
                                               つづく
          
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